Oceanus Online Archive
The Harshest Habitats on Earth
With help from ROV Jason and a new, high-tech sampling instrument, scientists discover that even in a hyper-saline realm, with no light and no oxygen, under crushing pressure, life still finds a way.
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A WHOI biologist is analyzing fish scales dating back to the 1930s to unravel changes in the ecosystem of Georges Bank, one the world’s most productive fisheries.
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Every new ocean instrument goes through growing pains. But the Submersible Incubation Device, nicknamed SID, has been a particularly long time coming.
It started more than 30 years ago as a […]
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The research expedition ended in near-disaster. Stephanie Jenouvrier, aboard the ship Marion Dufresne II, was heading to the Southern Ocean to study seabirds. On Nov. 14, 2012, while making a […]
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Whales do not make the easiest patients, but CT scans, MRIs, ultrasound, hyperbaric chambers, and other medical tools are making it easier to learn about them.
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Derya Akkaynak hails from a town called Urla in Turkey, and like most graduate students who come from foreign lands to study oceanography in Woods Hole, she keeps track of […]
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Amy Kukulya’s clients often have curious requests, but this was among the oddest. As an engineer at Woods Hole Oceanographic Institution (WHOI), she has operated autonomous underwater vehicles beneath Arctic […]
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From the beginning of 2011 to May 2013, Alvin, the U.S. science community’s only human-occupied submersible dedicated to deep-sea research, underwent a major upgrade and overhaul to greatly enhance its […]
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Imagine extraterrestrials come to Earth, seeking to understand human life. They dangle recording devices beneath the clouds or occasionally tag people with retrievable recorders. They collect thousands of bits of […]
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In 2010, an experiment led by physical oceanographer Ruth Curry put six subsurface moorings on the seafloor to measure deep-sea currents. In 2012, when they went to retrieve the instruments, […]
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From the beginning of 2011 to May 2013, Alvin, the U.S. science community’s only human-occupied submersible dedicated to deep-sea research, underwent a thorough overhaul and upgrade to greatly enhance its […]
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Alice Alpert, a graduate student in the MIT/WHOI Joint Program, studies what the chemistry of coral skeletons can tell us about the ocean in the past.
Before coming to WHOI, she […]
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From the beginning of 2011 to May 2013, Alvin, the U.S. science community’s only human-occupied submersible dedicated to deep-sea research, underwent a thorough overhaul and upgrade to greatly enhance its […]
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Since the beginning of 2011, Alvin, the U.S. science community’s only human-occupied submersible dedicated to deep-sea research, has been undergoing a thorough overhaul and upgrade that will enhance its capabilities. […]
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When conditions of light and nutrients align in the surface waters of the ocean, tiny single-celled algae called phytoplankton respond with explosive growth and reproduction in a phenomenon known as […]
Read More災害時の コミュニケーション
福島中央テレビ
福島第一原子力発電所の異常が日本中そして世界中に知れ渡ったのは、2011年3月の津波翌日のニュース速報で衝撃的なビデオ映像が流れた瞬間であった。福島中央テレビが捉え、4分後に放送したその映像は、福島原発から吹き上がる濃い白色の雲だった。これは、後に原子炉1号機の爆発によるものと判明する。だがそのときは、ニュースキャスターの緊迫した声で、それは煙のように見えるが、もしかすると水蒸気の可能性もあると伝えたのみであった。この白煙は、海上を北へ運ばれていくように見えた。
その放送責任者であった福島中央テレビの寺島祐二取締役副社長は、2012年11月に東京で開かれた「海洋放射能汚染に関する国際シンポジウム」で当時のひっ迫した状況を述懐した。寺島は、このシンポジウムにおいて災害時・災害後の情報伝達の取り組みについて議論を交わした日米ジャーナリストパネリストの一人である。
寺島は言う。「地元メディアとしての私たちの役割は、主に身近な出来事、特に災害について、ただちに報道することです。ですが、そのときは私たちも何を撮影したのか把握していませんでした。ただ撮影したままを放映するしかありませんでした」。
もう一人のパネリストであるニューヨークタイムズ紙のマーティン・ファクラー東京支局長も、当時は暗中模索であった。「最初の10日間はそんな状態でした」とファクラーは言う。「政府も東京電力株式会社も何も言ってきません。日本の科学コミュニティからも、ほとんど情報は得られませんでした。私たちが何とか状況を把握しようとしている間に、最初の爆発が起こり、続けて第2、第3の爆発が起こりました」。
ファクラーは、日本国外の科学者たちと話して初めてそれが水素爆発であった可能性が高いことを知り、それがおそらく原子炉の部分的なメルトダウンを意味することを知ったという。「ですが、これを記事にしたところ、「メルトダウン」という言葉を使ったとして日本側から非常に強い批判を受けました。それは驚くほどの強い否定でした」。
福島中央テレビのカメラだけが停電を免れ、爆発の様子を捉えた。そして、その映像は福島中央テレビの放送ネットワークだけに流された。日本政府がすでに原子力緊急事態宣言を発令していたこともあり、混迷と恐怖が広がった。
寺島は言う。「私たちが爆発の様子を放送したことを勇気ある決断だったと言ってくださる方々がいます。私個人の信条ですが、パニックを起こすからといって、このような重大情報の開示をためらい、またそれを正当化することは無責任だと思います」。
このとき多くの日本人がYouTubeにアクセスした。YouTubeには、海外で放送されたニュース番組から取った爆発の動画が多数アップロードされ、さらに効果音が加えられたものまであった。
「この放送の結果、社会は災害の本当の重大さに気づき、大勢の方が避難を決意したのです」と寺島は述べる。そして、当局への疑惑と不信が広がり始めた。
混乱の日々
ネイチャー誌でこの危機を報道したジェフ・ブラムフィール記者は、これとはやや異なる視点を同シンポジウムの参加者に提示した。「私はロンドンにいましたが、あれだけの情報があれだけ迅速に得られたことに驚いていました。東京電力株式会社は、計測されてすぐの放射線量値を事故から24時間以内に提供していましたし、原子炉の状況もリアルタイムで更新していました」。
本当の問題は、情報の欠如ではなく、コミュニケーションの欠如ではなかったか、とブラムフィールは示唆する。両者の違いは、災害の次の段階で明確になっていった。ファクラーは言う。正式な発表がほとんどないまま10日ほど過ぎた頃、「大量の情報が一度に開示されました。政府批判が高まったためだろうと思います。膨大なデータが何の説明もなく次々と公表されました」。
その時点で、健康物理学に詳しい記者がほとんどいないため、メディアは実際のリスクを理解することが非常に難しくなった、とブラムフィールは言う。一方、政府は、測定値に対する恐怖を和らげるため、線量が規定の安全レベルをはるかに超えているにもかかわらず、「大丈夫だ。リスクはない」と言い続けた。
寺島にとっては、パニックを防ごうと政府当局がむなしい試みを重ねていること自体が、恐怖で正常な判断力を失った状態に思えた。実際、このいわゆる「エリートパニック」が、後に広く報道されたSPEEDI(緊急時環境線量情報予測システム)に関する問題を助長した可能性が高い。この高精度コンピュータ予測システムは福島災害のほぼ直後に大気中の放射性物質の拡散予測を開始したが、その情報の初公開は2週間近くも延期された。避難住民は、SPEEDIを含め、どこからも指針が得られず、一部には難を逃れるどころか放射性物質の降下した高濃度汚染地域へ避難してしまった人々もいた。
ファクラーは、ニューヨークタイムズ紙に掲載した記事で、「日本の政治家たちは、当初SPEEDIのシステムについて知らず、その後は、そのデータを過小評価した。避難指示区域を大幅に拡大する必要性が事故の重大性を認めることになるのを恐れたのであろう」と書いた。動機が何であれ、データを伏せれば無防備な市民を危険に陥れる、と評論家は言う。そして、結果的に社会的信用はいっそう低下した。
致命的な決断はほかにもあった。ブラムフィールは、災害後、被災したいくつかの県が地元の米と魚を食べても安全であると宣言したものの、後日それらの食材に汚染が見つかるなど、判断を急ぎすぎた例を指摘した。それよりダメージが大きかったのは、政府が何の説明もなく一見恣意的に学童の安全な被ばくレベルを年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げたことである。
このような当局の失策は、低レベル放射線の影響が依然不明確であることとあいまって日本の社会に不満と怒りを生じさせたが、それは政府に向けられただけでなく、公の場での発言に消極的な日本の科学者たちにも向けられた。
便りが「ある」のはよい便り
メディアも無傷ではいられなかった。パネリストの一人、共同通信社の太田昌克編集委員は、初期に多くのメディア同業者に問題があったことを認めた。それには、大規模災害を取材する準備態勢の欠如、追い詰められた政府を批判したがらない消極的な姿勢、そして必要な専門知識不足から当局発表どおりの報道をする傾向などが含まれる。
必要情報が欠如していた結果、不安を抱えた市民は他の情報源を求め、多くが外国のウェブサイトやニュースサービスを探した。中にはボランティアとして被災地に踏み込んで自ら情報を得ようとする者もいた。
三重大学生物資源学部の勝川俊雄准教授は水産業管理の専門家であり、2011年3月以降の大半を、津波で破壊された村のうち何か所かにおいての 漁業者支援に費やしてきた。しかし、自ら子どもに何を食べさせるべきか悩む親の一人でもある勝川は、放射線が健康に及ぼす影響について独学で学び始め、不安を抱える他の保護者と話し合って、食の安全情報をインターネットで共有することにした。自身のブログとTwitterフィードが多くの人に読まれるようになった結果、彼は消費者団体向けの講演や女性雑誌への寄稿を依頼され、テレビにも出演するようになった。
東京で開かれた「海洋放射能汚染に関する国際シンポジウム」で勝川は言った。「日本の科学者は、不確かな情報を発表することにためらいを感じます。しかし、あの災害の後では、ほぼすべてのことが不確かでした」。最初の2日間で放射性ヨウ素の大半が大気中に放出されたことを考えると、「不確かさが解消されるまで待つ余裕はありませんでした」。
勝川自身が情報を伝える中で学んだのは、大半の人々は完全な情報を要求しているわけではなかったことだという。「慎重な説明がなされていれば、不確かな情報でもよかったのです。人々はそのときわかっていることを知りたがっていたのです」。
残念なことに、情報を伏せて被ばくリスクを過小評価する傾向は、災害後の日本全土に長期的な悪影響を及ぼした、と勝川らは報告する。福島から幅広い報道を行ったニュークリアインテリジェンスウィークリー誌のミゲル・クインタナ特派員は、同シンポジウムで語った。「社会の認識と科学的情報には大きな隔たりがあります。私が話を伺った多くの方々は、公表された情報をまったく信じていません」。
ニューヨークタイムズ紙のファクラーは、これに同意して次のように述べた。「非常に大きな問題がいくつも未解決のままです。まず社会的合意が得られていません。日本の友人たちは太平洋産の海産物を買いません。それは放射能測定値と消費者を安心させようとする言葉を信用していないためです。彼らは、消費者より生産者を優先する官僚体制が、食の安全レベルについて常に消費者をだましてきたと考えています」。
信頼と分断
人々の抱いた不信レベルを考えれば、日本の科学者が懸念を和らげようと何を言っても人々が耳を貸さないのは当然であろう、と外国人参加者の一部は言う。専門家はリスクを過小評価する代わりに、まず人々の怒りがどれだけ深いものなのかを認めなければならない。アルゼンチン原子力規制庁の顧問であるアベル・ゴンザレスは、国際原子力機関(IAEA)を通じてチェルノブイリ事故の評価を行った経験から、社会不安を最小限に抑えようとしても効果はないと言う。その代わり「皆さんが心配されるのは当然のことで、お怒りになるのも無理はありません」と言わなければならない、と彼は主張した。
このアプローチに同意するのは、米国海洋大気庁(NOAA)北西水産科学センター長であり、ディープウォーターホライズン原油流出事故後、メキシコ湾で米国海洋大気庁の水産物安全プログラムを率いたジョン・スタインである。
「メキシコ湾岸に来ても、私は米国連邦政府の科学者であり、その立場からして信用できない存在でした。その経験から教訓を得たとしたら、科学を人々に伝えるのは途方もなく難しい、ということです。起こった事故はとにかく認めなければなりません。事故に人々はとても傷ついています。社会と消費者に対して失った信頼を取り戻すには長い時間がかかるのです」。
メキシコ湾で米国海洋大気庁への信頼を得る手助けとなったのは、外部の専門家に独立した検査を依頼することだった、とスタインは言う。これに賛同して勝川も述べた。「他国からの科学者は大きな助けになります」。環境保護団体グリーンピースが福島周辺で大気中の放射線量を測定し、その結果が政府の測定値と一致したとき、政府の信用は一部回復した、と勝川は言う。
科学者の役割とは何か
勝川の自主的な取り組みは、日本国内における独立系科学者の重要な役割の一例である。ブラムフィールは述べる。「報道を続けるうち、ゲルマニウム半導体検出器を持った物理学者たちがやってきて地元の人たちと協力しながら土壌を測定し始めたと聞きました。同様なことはたくさんなされているのではないでしょうか。ただ、そういった研究者たちの声が公の場に出るのが欠けているのだと思います」。真に独立したNGOを日本で設立できれば重要な一歩になるであろう、と勝川とブラムフィールは声をそろえる。
このシンポジウム中にたびたび繰り返されたもうひとつの提言がある。放射線が健康に及ぼす影響といったデリケートな問題についてである。科学者たちがその専門知識を人々に信じてもらうには、自分たちの言葉を信じろとは社会に訴えないことが重要である。「あなたの被ばく量は低かったからまったく心配はいりません、と科学者が言ってもまず信じてはもらえません」とミゲル・クインタナは言う。放射線医学総合研究所の放射線生物物理学者である酒井一夫博士もこれに同意した。「科学で人を説得することはできません。『あなたの被ばくレベルはこれだけで、これまでの経験に基づくとこのような影響があります。あとはご自身で判断してください』というほかないのです」。
最後に重要な点として、科学者たちはメディアと建設的に協力し合える方法を見出していかなければならない、とパネリストたちは強調した。これは、たとえジャーナリストが科学を正しく理解できるか、理解したいと本当に願っているか、について科学者が不信感を抱いていたとしても、である。チェルノブイリ事故以来メディアとの付き合いが長いベッセラーによると、メッセージのニュアンスをゆがめないと信頼できるジャーナリストをみつけて、いい関係を保つことが非常に重要である。
共同通信社の太田は、科学者との間にはどうしても緊張が生まれてしまうことを個人的に認めた。しかし、福島原発災害が起きて科学者とメディアの関係がこれほど重要になった今、この関係を育てていかないわけには行かないと彼は言う。「この国の統治体制には、根本的な問題があります。メディア関係者と専門家による交流、そして対話は、私たちの未来にとって本当に重要です」。
絶対安全神話
「海洋放射能汚染に関する国際シンポジウム」の翌日、シンポジウム出席者らは一般からも参加可能な会議を開いた。その会議において、ブラムフィールはメディアを代表して、福島災害の報道から1年半経った印象を簡単にまとめた。「結論から言うと、この災害で情報を伝えることになった科学者と政府は、人々を守らなければ、と強く感じました。パニックを起こしたくない。恐怖を蔓延させたくない。それらを防ごうと情報を伏せたことが、かえって恐怖を広げる一番の原因になってしまいました」。
ブラムフィールは続ける。「ある意味おかしなことですが、何としてでも人々を安心させようとする当局の傾向は、この原発事故以前から存在していた多くの問題を反映していました。その問題は絶対に安全だという考え方にあり、これは日本だけでなく、世界中にあると私は思っています。原子力産業は、原子力が絶対安全だと人々に信じてもらうため、多大な労力を費やしています。福島の原発災害は、絶対的な安全性をうたう者が持つリスクを知らしめたのではないでしょうか。この事故が起こってしまったとき、その安全性を過信していた政府は真の対策を用意していなかったのですから」。
彼の言葉は、同シンポジウムで開会の挨拶をした大西隆日本学術会議会長のメッセージに重なった。「絶対安全神話は、この国の政策を支配し、我が国における原子力発電所の改善を妨げてきました。この根拠のない神話を復活させてはなりません」。
その代わり、日本学術会議は、絶対に安全であるという認識から将来の自然災害は避けられないという認識へと考え方を転換し、また災害を防止・回避するのではなく、予測し、その影響を軽減するため、主導的な役割を担っていかなければならない。そのような考え方には、過去の過ちから学んだ教訓を盛り込まなければならない、と彼は言う。
大西は、全国世論調査の結果を引用して、日本の科学者に対する社会的信頼が福島災害後に急落し、その後部分的にしか回復していないことを示した。
「私たちは、科学者団体として、人々の期待に応えられなかったと認識しています。このような綿密な調査と反省なくして、社会の信頼を完全に取り戻すことはできません」。
海洋環境放射能センターの新設
私たちの世界は放射能に満ちている。地球上に存在する1,500種以上の放射性同位体(放射性核種)は、その大半が宇宙創成時のビックバンで生じたといわれ、今も岩石、水、大気中に自然に存在する。冷戦中の核兵器実験、あるいはチェルノブイリや福島の原発事故等で環境に放出された核時代の人為的な産物もある。
放射性核種の化学物理的な特徴は多種多様である。その一部は人の健康に影響を及ぼすことが明らかにされているが、リスクが誤解・誇張されているものもある。放射性核種の多くは、環境における様々な過程を調べるためのトレーサーとして使用されており、そのおかげで自然界に対する理解は格段に深まった。
放射能汚染について長年やや楽観的な姿勢を保っていた社会と政策立案者は、福島の原発事故で放射能に対する懸念を新たにせざるをえなくなった。世界には400以上のの原子力発電所があり、その数は多くの国で増え続けている。また、放射性廃棄物は安全に保管されることなく山積みにされ、核を燃料とする原子力船・原子力潜水艦は海を行き交い、さらに核兵器や核を使用しない「汚い爆弾」(ダーティーボム)による汚染拡散も懸念されている。その上、冷戦中に専門訓練を受けた原子力科学者と放射化学者の多くは、いま定年を迎えている。
「必要に応じて対応できる経験豊富な専門家が現在必要とされています。また、社会の信用を築いていくには、信頼できる独立した研究機関による調査が不可欠です」と、ウッズホール海洋研究所のシニアサイエンティストである海洋化学者ケン・ベッセラー博士は言う。そう確信したベッセラーは、東京から戻った直後、世界の諸機関から協力を得て海洋環境放射能センター(CMER)の新設に向けて動き出した。
CMERは次世代の放射化学者を育て、必要最低限の専門科学者を維持するための研修と支援を行っていく。CMERの使命は、科学革新を推進し、有益な知見を生み出していくことであり、また環境における電離放射線のリスク、恩恵、影響を社会と政策立案者に伝えていくことである。
福島と海シリーズ